ドライクリーニング・ウェットクリーニング・ランドリークリーニングの違い

「ドライクリーニング」と聞いて、その語感から、濡らさずに洗う？どうやって？と疑問を持たれる方もいるのでは。ドライといっても、濡らさないわけではありません。水ではなく、揮発性のセキユ系有機溶剤で洗う方法をドライクリーニングといいます。

専門店でのクリーニングには、このほかに「ウェットクリーニング」と「ランドリー（クリーニング）」という洗い方があります。ウェットクリーニングは、デリケートな衣類を、特殊な洗剤を用いて、生地を傷めないように水洗いするクリーニング方法。ランドリーは一般家庭での洗濯に近く、水に強い衣類を水洗いすることなのですが、クリーニング専門店では、汚れ落ちのいい専用洗剤を使い、汗や皮脂などの汚れが落ちやすいように、温水で洗うのが特徴です。

クリーニング専門店は、衣類本来の風合いを生かしつつ、さっぱりときれいに仕上げるために、生地の性質や汚れに応じて、水で洗う方法と、溶剤で洗う方法を使い分けているのです。

ドライクリーニングって何を使って洗うの？――溶剤のヒミツ

ドライクリーニングにはこの洗い方ならではのメリットがあります。例えば化粧を落とす場合、洗顔だけよりは、先にオイル系メイク落としでオフした方がメイクをきれいに落とせますよね。着用後の服には人の身体から出た皮脂や垢などの油脂系の汚れがたくさんついているのですが、こうした皮脂汚れをはじめ、化粧品、油を使った食品の汚れなど、油脂系の汚れは、メイク同様、油に溶かすと落としやすいもの。つまり、セキユ系有機溶剤で洗うドライクリーニングは油脂汚れを落とすのが得意なのです。

さらに、この溶剤の優れた点というのが、衣類を型崩れさせずにしっかりと洗えること。例えば、ティッシュペーパーを水に浸してから引き上げると、紙の繊維が縮んでしわが寄ってしまいますが、セキユ系有機溶剤に浸して引き上げると、しわが寄りません。これは布や毛糸でも同様。水洗いすると縮んだり、型崩れの恐れがある衣類も、溶剤で洗うことできれいに仕上げることができるのです。

クリーニング専門店のドライクリーニングの工程は？

専門店でのドライクリーニングの工程をご紹介しましょう。

①衣類は専用の洗濯機に入れ、セキユ系の有機溶剤で洗い、汚れを落とします。

Point!

溶剤は活性炭を用いたフィルタで汚れをろ過しながら循環させ、常に無色透明の液にして洗っています。汚れがたまったフィルタは定期的に交換します。この交換を怠ると汚れた溶剤で洗うことになるので、衣類の色がくすんだり、嫌な臭いが残る原因に……。ニューワタナベでは、業界推奨の交換基準より、さらに早い段階でフィルタを交換することで、臭いを残さない、質の高いクリーニングを保っています。

②洗い終わった衣類は、素材に適した方法で乾燥させます。

Point!

乾燥工程では、溶剤と水分を分離させます。回収した溶剤は再利用することで環境へも配慮しています。

ドライクリーニングにもデメリットがある

実はドライクリーニングにも落とすのが苦手な汚れがあります。それが、汗や飲食物など水溶性の汚れ。例えば、塩は水には溶けますが、油には溶けにくいもの。塩分を含む汗汚れやしょうゆなどの汚れは、セキユ系有機溶剤では落としにくいのです。

そのため、型崩れの心配がある衣類だけれど、汗汚れを落としたい場合は「汗ぬき」加工をオーダーしていただくのがおすすめ。ウェットクリーニングで優しく水洗いすることできれいに仕上げます。または、汗汚れも落とす特殊な洗剤を使ったドライクリーニング、「さらさらドライ」をオーダーしていただく方法もあります。

家庭でドライクリーニングってできる？

最近の洗濯機にはドライコース（おしゃれ着洗いコース）などの機能があるものが多く、また、家庭用洗剤でも、おしゃれ着洗い用の中性洗剤が市販されていますよね。そうすると、家庭でもドライクリーニングができそうな気がします。

ですが、そもそも、クリーニング店のドライクリーニングと、家庭の洗濯機でのドライコースや、おしゃれ着用洗剤での洗濯は全くの別物。前述のように、クリーニング店のドライクリーニングはセキユ系有機溶剤で洗うことを指しますが、洗濯機のドライコースは、弱い水流でやさしく水洗いする洗濯コースのこと。おしゃれ着用洗剤も普通の洗剤よりもノビや縮み、しわを防ぐので型崩れ予防になりますが、水洗いでの使用が前提となります。なので、洗い方や乾かし方によっては、型崩れ等のリスクがないと言い切れません。

最近はマシンウォッシャブルをうたったニット製品も増えています。洗濯表示を確認したうえで、家庭で洗ってもいいと思えるものは、家庭で洗い、長くきれいに使いたい本当に大事な服はクリーニング店に預けていただければと思います。